製缶板金加工の中でも、ステンレスを使用した加工は、いくつか注意しなければならないポイントがあります。
今回のコラムでは、ステンレスの特徴から加工時の注意点まで詳しく解説いたします。
食品製造業では、食品の安全性や環境の清潔性が求められます。
そのため、食品製造業で使用されるコンベヤも耐環境性に優れた材料を使い、洗浄やメンテナンスが容易であるという特徴があります。
ステンレス鋼はクロムを加えた合金鋼で、クロム含有量が10.5%以上、炭素含有量が1.2%以下の金属です。
このクロムの働きにより、表面に不動態皮膜が形成され、本体を保護しています。
そのためステンレス製の製品は寿命が長く、修復・交換の頻度を少なくすることができます。
しかし、室外で湿気や塩気のあるような場所ではゆっくりと腐食が進むため注意が必要です。
ステンレス鋼は500℃まで引張強度に大きな変化がありません。500℃を超えると強度が落ち始め、特にマルテンサイト系とフェライト系のステンレス鋼は急激に強度が下がります。
でも落とさずに運べます。
ステンレス鋼は鉄より強度が高く、強度が求められる場面でも使用されます。
建築・土木分野では構造物や建造物の基礎や骨格にも使われます。
ステンレス鋼は熱伝導性が低く、熱が伝わりにくい性質があります。
ステンレス鋼は難削材と呼ばれる、切削加工の難易度の高い素材です。
熱伝導性が低いという特徴から、加工時に発生する熱が工具に集中します。
そのため工具の寿命が急激に短くなります。
特にオーステナイト系ステンレス鋼は加工中に極端に硬さが増す加工硬化と呼ばれる現象により、トラブルの原因になることもあります。
また、工具との親和性も高いため、切り粉が刃物に溶着しやすくチッピングが発生します。
それにより加工精度を出すのが他の金属に比較して難しくなります。
先ほどのステンレスの特徴をふまえ、ステンレスに加工を施す際の注意点をご説明いたします。
製缶加工の流れに合わせて解説していきます。
切断加工は主にレーザー加工機やシャーリングという機械、あるいはディスクグラインダーという電動工具を使用します。
ステンレスは熱伝導率が悪いので、切削加工の際に工具の先端部分に熱が溜まりやすくなってしまいます。
その結果、工具の先端部分の破損につながりやすいです。
熱による悪影響を小さくしようとすると、熱がこもらないように遅い速度で加工する、切削油を大量に使用するなどの工夫が必要です。
そしてステンレスは鉄などの金属と比較すると粘性が高く加工硬化しやすい特徴を持っています。
そのため長時間にわたり切削を続けると、材料のステンレスが硬くなってしまい削りにくくなり、工具が破損しやすくなるなどの可能性があります。
抜き加工は、材料を抜き型の型に合わせて打ち抜く工程です。
主にタレパン(タレットパンチプレス)という機械を使用します。
穴あけ加工は、材料に穴をあける工程です。
タップ加工はあけた穴にねじが入るように、めねじ(ねじが入る筋)を切る工程です。
ボール盤という機械や、電動ドリルなどを使用します。
曲げ加工は、材料を曲げる工程です。
主にプレスブレーキという機械を使用します。
ロール加工は、材料を筒状に丸める工程です。
3本ロール、4本ロールなどのロール機を使用します。
ステンレスへの曲げ加工で注意すべき点は以下の3点です。
ステンレスの種類によって曲げに対する強さなどの特徴や用途が異なるので、種類に合った方法で加工を施すことが重要です。
ステンレスは熱伝導率が悪く、加工時に工具やステンレス板に熱がこもりやすい特徴があります。
そのため、加工によって高温になった後、急速にステンレスが冷えると割れの原因につながるので注意が必要です。
加工によるステンレス板の割れを防ぐには、曲げる角度を少し大きくする、加工時の熱を逃がす工夫をするなどの対策が必要になります。
ステンレスはスプリングバックが大きい金属素材のひとつです。
一般的な炭素鋼と比較して加工時に1.5倍の圧力を加えなければならないケースもあるほど、ステンレスのスプリングバックは大きいです。
そのため、加工時にはどれくらい加工前の状態に戻ってしまうのかを計算して加工をしなければなりません。
加工前の状態に戻ることを計算せず曲げ加工を行ってしまうと、形が歪んでしまう、製品寸法がずれてしまうなどの問題が発生してしまいます。
ステンレスを精密・複雑な形に加工したい場合、スプリングバックの計算は特に重要です。
溶接は、二つ以上の材料を溶かして接合させる工程です。
溶接には、アーク溶接、TIG溶接、半自動溶接、レーザー溶接などいくつか種類があり、材料の種類や厚さ、製品の形状などによって使い分けられています。
ステンレスの場合は、鉄に比べて溶け込みやすいので温度管理が難しく、技量が必要となります。また、薄板のステンレスの溶接は歪みが発生しやすいという特徴があります。
また、ステンレスは成分や種類によって選択すべき溶接法が異なります。
これは、溶接時の熱によって材料の形が変わってしまうためです。
そして、溶接自体にも高い技術が必要です。
研磨は、材料や部品の表面を磨き、溶接の跡を目立たなくしたり、表面に光沢を出したりする工程です。
ステンレスでは、表面に細い縦線を入れる、ヘアラインという研磨もあります。
ステンレス材は他の材料に比べて塗装などをすることなく、加工した製品がそのまま使用されることが多いため、取扱いには非常に注意が必要です。
ここからは、ステンレスを使用した当社の製缶加工品事例をご紹介いたします。
ステンレス製の生産機械の製作事例です。
直径:2,000 × 高さ:900とサイズの大きなタンクです。
タンク内部に設置された邪魔板と底部に配置された回転羽根によりランダムにスピン水流を発生させる大型撹拌機となります。
サイズの大きな構造物を得意とする当社の特徴を生かし…
ステンレス材と鉄鋼剤の大型構造物のプラント用タンクの事例となります。
プラントに使用されるタンクであるため、幅:2,500☓ 高さ:3,000☓ 長さ:5,000と非常にサイズの大きなタンクの製作依頼でした。
タンク、容器として使用されるため、耐久性が非常に重視されるためステンレス材や鉄鋼材での製作となりました。
製品用途をヒアリングさせていただいた際に水密、機密を有する用途で水密試験や気密試験を実施したいというご要望をお聞きしたため…
当社では、ステンレスへの製缶板金加工において多数の実績を保有しております。
今回取り上げた事例のような大型の製缶板金加工の案件がございましたら、当社までご相談ください。